民業圧迫から民業補完へ
日本政策金融公庫(以下、公庫)や商工組合中央金庫(以下、商工中金)といった政府系金融機関は、低金利等の有利な条件で民間金融機関から融資先を奪っていく事例が多く、民業圧迫の批判は根強くあります。特に商工中金による組織的な不正融資が発生したのを契機に、民間金融機関からは民業圧迫の批判は強まっています。
私は公庫の職員と話をする機会がありますが、この民業圧迫というキーワードには非常に神経質です。
複数の銀行と公庫にリスケジュールで支援をしてもらっている顧問先様があるのですが、経営改善の定期的な報告をしに行っても、「メインの〇〇銀行さんが支援するなら、うちも継続してご支援します」とだけしか言いませんし。
新規融資の場面だけでなく、経営改善支援の現場でも出しゃばり過ぎて民業圧迫と言われないよう気を付けている印象です。そして民業補完に務めようとしています。
協調融資は増加傾向
しかし、公庫のような政府系金融機関が不要だともいえません。それは民間金融機関で働く行職員も同じ考えだと思います。
なぜなら、創業時、経済危機や大災害の発生時等のケースでは、民間金融機関だけで十分に中小企業を支援することが難しいからです。
金融庁は、「公的金融は、民業補完を旨としつつ、民間金融機関と連携・協力して地域経済の発展を下支えする等の役割を担っている」(2017事務年度金融行政方針)と指摘しているように、公的金融機関が民間金融機関と連携することを強く求めています。そして、民間金融機関に対しても公的金融機関との連携を求めています。
行政の方針もあり、民間金融機関と公的金融機関との連携体制は、信用組合を除けばほぼ100%構築されています。
その結果、協調融資の実績は件数・金額とも着実に増えてきています。
※「民間金融機関と日本政策金融公庫との連携状況 平成30年4月24日 財務省大臣官房政策金融課」より
このように年間約2万件の協調融資実績となっています。特に創業、事業再生の分野で民間金融機関から公庫へ連携を求めるケースが中心です。
特に創業の分野では公庫は以前から支援に積極的であったし、自己資金の要件もいち早く引き下げて創業しやすい融資制度にしてきました。民間金融機関からすると、公庫と協調することで自行庫も融資を出しやすくなる効果があります。
これから創業をされる方、あるいは業歴が浅い企業でしたら、公庫と民間金融機関どちらからでも融資を申し込むことはできますが、協調融資を利用することで資金調達の可能性を引き上げることも考えてみてもいいでしょう。