企業支援に熱心な金融機関を選択

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株式会社東京商工リサーチが公表したメインバンク調査の中で、取引先の「増収増益」企業率は京葉銀行が1位になっていました。

メインバンク別に、取引先企業(2023年1月~12月期)の売上高、最終利益を対象とした増収増益率から算出されています。1位京葉銀行、2位北國銀行、3位北海道銀行、4位千葉銀行、5位八十二銀行でした。詳しい内容はこちらを参照してください。

千葉県の例

当社は千葉県で起業しましたから県内の顧問先は多いのですが、みなさん千葉県の地方銀行(千葉銀行、京葉銀行、千葉興業銀行)のいずれか一つとは取引をしています。他にも千葉県内には信用金庫や信用組合もあります。確かに金融機関によって姿勢に差はあると思います。

積極的な金融機関

千葉県の顧問先を支援していると、今までお付き合いした京葉銀行行員は中小企業支援に一生懸命でした。どの顧問先も融資だけでなく資金繰りが苦しければリスケジュールにも前向きでしたし、売上減少で悩む顧問先はすぐに見込み客を紹介してくれたりもしました。

千葉銀行もそうだと思います。殿様商売している等の不満を言う経営者はいますが、、積極的な支援に助けられている中小企業も多いです。

消極的な金融機関

実名は避けますが、千葉県のある金融機関は、担当者が自分の営業成績のために決算内容を粉飾するよう指示したり、信用保証協会を騙して保証を得る、融資する見返りに金融商品を買わせようとするなど、(私の知る狭い範囲では)あまりいい話を聞かないことが多いです。

もちろんそれは一部の担当者だけですが、不正な方法をさせようとする、企業側が求めてもいないサービスを押し売りしてくる、こういう金融機関は注意です。

取引する金融機関はよく考えて選択

金融機関なんてほとんど似たようなものかもしれませんし、どの都道府県でも中小企業の経営支援に熱心な金融機関はあります。

しかし、先ほど述べたようにごく一部には中小企業支援に差が出ることがあります。自社の取引金融機関を今までどおりメインバンクでいいのか、他とも付き合うべきかどうかを特に金融支援の点から参考にしてはいかがでしょうか。

経営者保証

金融庁は、経営者保証に依存しない融資慣行の確立を金融機関に求めていることから、徐々に経営者保証に依存しない新規融資の割合は高まっています。政府系金融機関は半分以上がそうですし、民間金融機関でも半分近くにまで増加しています。

(出典、中小企業庁:経営者保証のガイドラインより)

経営者保証を不要とする3要件が、経営者保証に関するガイドラインで公表されています。その3つとは次のとおりです(なお3つすべてクリアしなければならないわけではありません)。

・経営者個人と企業の資産が明確に分離され、資金のやり取りが適切な範囲を超えないこと

・企業のみの資産・収益力で借入金返済が可能なこと

・企業から金融機関へ、適時適切な財務情報などの提供が行われていること

3つをすべてクリアする企業でも、未だに経営者保証を要求することが多いようです。より積極的な事業展開を考えているが、経営者保証があると慎重になってしまう経営者もいるでしょう。

経営者保証の負担をなくしたいとお考えの経営者は、金融機関のディスクロージャー誌に書いてありますし、金融機関に自社は経営者保証を外すことはできないか直接聞いてみることです。相談を受けた金融機関が企業支援に熱心なら、どうすれば保証解除が可能になるのかを丁寧に答えてくれるはずですしその義務があります。

プロパー融資での支援実績

金融機関に融資の相談をすると、「信用保証協会の保証があれば融資します」と毎回言われることはありませんか。信用保証協会は原則80%(一部の保証制度は100%)を保証しますので、金融機関としてはできるだけ利用したい制度です。

中小企業庁は信用保証協会別の金融機関別保証実績を公表しています。「信用保証協会別の金融機関別保証実績、令和5年4月~令和6年3月」をご覧ください。

保証件数や金額だけでなく、うち100%保証をどれだけ利用しているかなどが分かります。そして一番右側をご覧ください。保証承諾件数に占めるプロパー融資の割合が分かります。金融機関は信用保証協会だけに依存せず自行もリスクを負って融資をすることが求められています。これが高い割合になっていれば、プロパー融資(信用保証協会の保証が付かない融資)での支援にも積極的ということです。できればそういう金融機関と付き合うべきです。

東京信用保証協会を利用する信用金庫を見ると、一番高いのが東京東信用金庫47.8%、最も低いのが世田谷信用金庫9.9%でした。

また、保証債務残高の件数は東京東信用金庫27,711件でしたが、このうち100%保証が12,669件、その割合は45.7%です。しかし、世田谷信用金庫も見ると3,731件、うち100%保証は3,342件、その割合は89.6%です。明らかに差が出ています。

東京都でも営業エリアが異なりますから、世田谷信用金庫に問題があるとは言い切れません。ただ、100%保証が中心でプロパー融資の実績数が少ないのでは、リスクを負ってまで地元中小企業を支援したくないのでは?と思ってしまいます。

お近くの金融機関もぜひ確認してください。どちらを選ぼうかという場合は参考になるでしょう。

預貸率

預貸率とは金融機関が預金者から預かっている預金のうち、どれだけ貸出(融資)されているかの割合です。100円から90円融資すれば、預貸率は90%ということです。

預貸率は金融庁の都道府県別の中小・地域金融機関情報一覧で確認できます。

都道府県によって差はありますが、とはいえ同じ地域内でそんなに大差は出ないものです。しかし、一部例外があります。

ここでは高知県の金融機関を確認します。

高知県内には2つの信用金庫があります。幡多信用金庫と高知信用金庫です。金融庁のホームページに令5年3月末時点での預金と貸出金が分かります。どちらも令和5年3月末時点。

幡多信用金庫の預金162,974百万円、貸出金(中小企業向け)95,642百万円(80,315百万円)

高知信用金庫の預金843,181百万円、貸出金(中小企業向け)69,823百万円(61,796百万円)

同じ高知県でも場所が違うとはいえ、幡多信用金庫の預金と貸出金のバランスを中小企業向けで見ると、49.3%、高知信用金庫は7.3%しかありません。地方銀行の四国銀行や高知銀行を見ても50%前後はあります。

ここまで極端なケースは他でもないとは思いますが、預貸率は高いか、そして中小企業向け融資に積極的かも確認しましょう。

知り合いの経営者の意見

お近くにお知り合いの経営者がいれば聞いてみましょう。人によって意見は様々ですし、実際に自分で付き合ってみないと分からないことも多いですが、かなり参考になることが多いです。

企業側の努力も必要

金融機関がどれだけ企業支援に前向きなのかを融資に加え、経営者保証やプロパー融資の実績などについて触れました。

経営者の立場からすれば、経営者保証はない方が精神的に楽ですし、プロパー融資が増えれば信用保証協会の保証枠を空けることもできます。

しかし、企業はそれらを勝ち取るための経営をしなければなりません。利益を出し続け財務内容を良くしていかなければなりませんし、定期的に自社の正しい情報を開示する義務があります。「景気が悪いのだから赤字でも仕方がない」「決算書の数字を調整しよう」「試算表も都合よく作っておこう」では金融機関も前向きな応援はできません。

金融機関から応援してもらうには、経営者として経営で結果を出すこと、隠し事や嘘はつかない、経営情報を積極的に提供する、企業として当たり前のことが求められます。

まとめ

金融機関によって融資先への支援には差が出ます。融資だけでなく経営支援に熱心なところもあれば、自分たちの営農成績ばかりを考えている金融機関もあります。

預貸率が異常に低くないか、経営者保証に依存しない取り組みを行っているか、プロパー融資でも支援するのか等にも注目して金融機関を選ぶと経営にもプラスとなるでしょう。