貸借対照表の資産部分に貸付金が計上されていることがあります。これは経営上大きな問題を抱えていると考えられます。
貸付金発生の原因
従業員や親しい取引先から頼まれて貸し付けることもありますが、中小企業の場合はほとんどが経営者への貸し付けです。具体的には個人的趣味(株式投資、高級車)、自宅購入資金に使っています。
他には業績が悪く経営者の役員報酬を大幅に引き下げてしまっているため、それだけでは生活費が足りず不足分を貸付処理していることもあります。
それともう一つ、経理がずさんなために社長への貸付金になっていることも多いのです。それは次のような流れになります。
現金での支払いに備えて法人口座から10万円出金します。しかし、その10万円は経営者個人の財布に入れてしまうため、いつの間にか個人でも使ってしまいます。
結局10万円出金したけど領収書の合計額は(例えば)9万円となり、経理上は現金で1万円残っていることになります。そんなのが日々積み重なっていくと、決算の頃には現金残高が異常に膨れ上がってしまうのです。
膨れ上がった現金残高をそのままにしている企業もありますが、経営者はもらった感覚はないでしょうが、実体は経営者への貸し付けだからと正しい現金残高にして、差額を貸付金にて処理せざるを得ないのです。
中小企業ではこのようなことは多少仕方がない場合もありますが、あまりにも実体とかけ離れた現金残高が発生してしまうのは経理がずさんといえます。
貸付金を金融機関はどう見る?
経営者からすれば、自分が代表取締役でかつ100%株主なのだから、個人に資金が流れてもいいだろうという意見もあると思います。確かにその通りで誰も文句を言えません。しかし、融資をしている金融機関はどう見ると思いますか。
金融機関は皆さんの会社に、商品や材料を仕入れるため、設備を購入するため、経営を立て直すための資金として融資をしているはずです。その資金を個人的な目的で使えば資金使途違反として、今後の資金調達に大きな影響を与えます。経理がずさんなだけで個人的に使う目的ではなかったとしても、結果的に個人に多額の資金が流れていたとすればやはり影響を受けるのです。
少額の貸付金は問題はありません。しかし、貸付金額が大きければ、直ちに返済しろとは言われないでしょうが、しばらく融資は控えると言われてしまう可能性があります。
ですので、金融機関から借り入れた資金を個人目的のために使うのは絶対にやめてください。実際にあったことですが、自宅購入の頭金を運転資金と説明して借り入れした社長に会ったことがあります。それ以外にも、運転資金で借りて愛人にマンションをプレゼントした社長も知っています。どちらも多額の貸付金が影響して、取引銀行はその後の融資から引いてしまい倒産しました。
保険を使った解決方法もありますが、原則は役員からの返済、一括は無理なら役員報酬の一部から毎月返済をしていく必要があります。そして今後は発生させない取り組みも必要となります。原因を持たずに経営者が経費を立て替え、後で領収書の合計額を支払うような方法です。
資金繰りに影響する
塩漬けされた貸付金があると資金繰りに影響します。
金融機関から借り入れた資金が事業とは無関係なことに使われたら、利益を生み出さないどころか回収できる可能性も低いため、利息支払いや返済ができません。ましてや社長への貸付金はなかなか回収できないことを金融機関担当者は知っています。だから決算書の中に(多額の)貸付金があると、金融機関は嫌いますし非常に警戒します。
経理業務をしっかり行う、そして個人的な目的のために使わないようにして、貸付金を極力発生させないようにしましょう。
親しい会社から資金を貸してほしいと依頼されても、原則は応じないようにして下さい。あたりまえですが、そのように依頼されて貸し付けても、回収できないリスクが高いからです。
もし以前にお世話になったなどの理由からどうしてもという場合は、社長個人の資金を貸し付ける程度にして、会社の資金繰りや経営に影響を与えないようにして下さい。