金融機関から融資を受けているが、常に返済が順調にいくとは限りません。そんな時、経営者は何をすべきか悩むかもしれません。だからといって何もせず放置していれば、金融機関から厳しい対応を受けることになります。
そこで返済が厳しい場合の対応について説明します。
返済不能になりそうな場合にまずやるべきこと
金融機関への返済が、今までどおりできそうにない可能性が出てきたら次のような対応をしましょう、
まずは金融機関に連絡
金融機関は返済日に返済ができていないものについては、リアルタイムに把握ができます。それを見て行員は返済に必要な額を返済口座に入れるよう督促の連絡をします。はっきり言って面倒な仕事です。
約束した日に返済ができないのですから、まずは経営者が事前に金融機関へ連絡をしましょう。「向こうから連絡してくるだろう」という態度は良くありません。常識がないと思われます。金融機関から何を言われるか不安かもしれませんがまずは連絡です。金融機関はそういう経営者を信用します。
連絡時に報告すべき内容
返済不能前に連絡するのはいいことなのですが、「明後日の返済が厳しそうです」だけでは不十分です。
必ず電話でいつ返済ができるかを伝えます。「5日後にA株式会社から売上代金1,000万円が振り込まれるので返済ができます」といったようにです。
もしすぐに返済できる見通しがないのであれば、その理由を詳しく説明しなければなりません。改めて訪問し説明することになります。
リスケジュールと交渉の流れ
返済ができない企業への金融支援は、新たな融資を実行して資金繰りを支援するか、リスケジュールにより返済額を軽減することによる資金繰り改善支援の2つが中心になりますが、基本的には後者となるでしょう。
リスケとは
リスケジュール(リスケ)とは、返済額を軽減する資金繰り支援方法です。毎月50万円の元金返済を10万円にしてもらうとか、極めて資金繰りが厳しいなら0円にしてもらえることもあります。
経営悪化により資金繰りが厳しい企業への融資は、将来の返済不能が懸念されます。しかし、ここで金融機関が支援を打ち切れば融資先企業は倒産し、融資残高の回収が不能になります。それでは企業だけでなく金融機関にメリットがありません。そこで新たな融資は出せないが返済額を減らしている間に経営を立て直してもらい、返済を再開してもらうよう支援するのです。
企業側も一時的に資金繰りの悩みから解放され、経営改善に集中することができます。
交渉の流れ
金融機関にリスケをお願いする流れとしては、まず電話連絡することですが、その先については次のとおりです。
現状と窮境原因の説明
まずは現在の経営状況と窮境原因を説明するところからはじまります。なぜ経営が悪化したのか、その理由を隠さず伝えましょう。もし粉飾決算をしていた場合は、それも正直に伝えてください。
そして「これからどう経営を立て直し返済していくのか計画書にまとめるので、少し時間が欲しい」と伝えましょう。しかし、計画書作成中にも返済が続いてしまうのを防ぐためにも、「返済を止めてください。その間に経営改善計画書を作成し、今後の返済計画をご説明しますので」とお願いしてください。
経営改善計画書の作成と取引金融機関への説明
経営改善計画書には、経営が悪化した原因を詳細に調査し、経営改善に必要な具体的かつ実現可能性の高い施策、それを実行した場合に予想される損益計算書、貸借対照表そしてキャッシュフロー計算書が必要です。将来得られる見込みのキャッシュから返済計画を策定します。
そして、取引金融機関担当者に集まってもらい、計画内容を経営者が中心となり説明します。
なお今後1年程度先までの資金繰り表も必要です。リスケ支援はしたもののすぐに資金ショートする可能性が高いのではリスケする意味がありません。
条件はすべて同一で
複数の金融機関と付き合いがあると思いますが、必ずすべて同一条件でリスケを行わなければなりません。
A銀行は残り少しだから返済を継続し、B銀行とC信金だけ返済0円にするようなことは認められません。B銀行とC信金から反対されます。
毎月可能な返済額を、金融機関の融資残高に応じた比率で案分して返済することになります。それが守られないと支援を受けられません。
リスケ中にやること
リスケ中は計画内容に沿った経営を行い、成果が出ているか試算表などを使って進捗管理を行います。もし計画通りに進んでいなければ計画内容に問題があり、改善策を再度策定しなければなりません。
その内容は金融機関にも必ず報告してください。基本的には3か月あるいは半年に1回程度の報告は求められるはずです。
リスケのデメリット
リスケは返済額を軽減してもらえるメリットはありますがデメリットもあります。
原則として新規融資は出ない
資金繰りが悪化し返済ができないわけですから、追加融資をすることは原則ありません。なぜなら、金融機関が重視するのは全額回収だからです。
リスケ中でも予想以上に経営改善が進み、前向きな資金需要が発生すれば、検討してもらえることもありますが、あまり期待しないほうがいいでしょう。
リスケ中は手持資金しかない
リスケ中は融資をしてもらえないと考えたほうがいいですから、企業の手持資金、経営者の個人資産で資金繰りを維持しなければなりません。
リスケ前に借り換えができないか
リスケをすれば返済額は減らせますが、それではこれからの融資がほとんど期待できません。そこで借り換えにより毎月の返済額を減らせる可能性があります。
借入本数が多いと返済額は増えます。例えば30,000千円を5年で返済するなら、年間の返済額は6,000千円です。そこで返済した分だけ預金が減少したので、新たに同額融資を受けたとしましょう。すると年間返済額は7,200千円(6,000千円+1,200千円)です。もし返済分も含めて借換えをすれば、6,000千円のままです。
資金繰りが楽でない企業は、このように借入本数が増えていることがあります。融資の内容によってはまとめることができない場合もありますが、できるだけ増やさないようにしましょう。
返済不能前に行動する
返済が困難になる前から行動が必要です。
リスケを相談するタイミングですが、相談に来られる企業の多くは資金がほぼ底をついてからなのですが、それでは明らかに遅すぎます。
手持資金だけで資金繰りが維持できるのかが重要ですから、数か月後には資金ショートが発生しそうな時点で相談しましょう。
利益が減少してきた、少しずつ資金繰りが苦しくなってきた、金融機関からの融資が難しくなってきた、このような動きがあったら早期に経営を見直すことです。
問題は小さいうちに対応したほうが解決も早いです。
したがって、今期の数値目標と実績に乖離がないか、過年度の決算書と比べ利益額や利益率に異常がないか、借入金が増加し現預金は減少していないかなど、悪い動きをよくチェックしましょう。
当社ではこのように早期の経営改善ができるようサポートしています。


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