金融検査マニュアル廃止後、企業がするべきこと

金融庁 銀行融資

金融検査マニュアルの廃止

金融検査マニュアルは、バブル時代の不良債権を抜本的に処理するために、金融庁の検査官が金融機関の経営の健全性をチェックする際に用いる手引書として1999年に公表されました。

不良債権処理問題については解決しましたが、その一方で財務を中心にした審査に偏ってしまい、金融機関の融資先に対する目利き力が低下するという副作用をもたらしました。

これまでの経営はうまくいってなかったが、事業の将来性から経営の健全性が保たれ、返済も十分可能であると見込まれる融資先であっても、金融検査で債務者の区分が引き落とされることに備えて信用保証協会の利用、あるいは担保や保証を取っての対応が強くなったのです。

「当社の経営はこれから改善されていきますから融資をお願いします」と言っても、「次の決算書を見てから」、「しばらく様子を見させてください」、「追加の担保や保証人お願いします」と言われた経営者も多いでしょう。

決算書が良いと金融機関の担当者も頻繁に訪問してきて、好条件での資金調達が可能となります。しかし、決算書が悪ければ担当者の支援も消極的になり、せっかくのビジネスチャンスがあっても、資金不足で断念せざるを得をないことも多く、経営改善が進まないことになります。

金融機関も過去ばかりを見ないで、企業の将来性を評価して融資をしていきたいのですが、金融検査を考えると、信用保証協会、担保や保証と保守的になってしまうのです。

金融庁もそのような状況を改善するために動き出しました。

「十分な担保・保証のある先、高い信用力のある先等」には、事業を見ずに激しい金利競争を行い、「担保・保証がなくても事業に将来性がある先、信用力は高くないが地域になくてはならない先等」には金融支援を行わないことを「日本型金融排除」と呼んで問題視し、それを改善するよう、財務データ、担保・保証に過度に依存することなく、企業の事業性や将来性を評価するよう求めたのです。

それが可能となるよう、大口債権等の一部以外については、金融機関の主性を尊重する方針を打ち出し、金融検査マニュアルの運用を停止しています。そして今年4月以降に金融検査マニュアルは廃止されます。

このような金融庁の対応の変化に応じて、既に企業の事業性を評価しての支援をする金融機関も増えてきています。

債務超過であっても、今後の見通しが十分改善されるものであれば新規融資をする、リスケジュール中であっても、企業の再生に必要な資金であれば融資は出やすくなりました。

企業側からの情報開示が重要

決算書が悪いなどの理由で融資が断られた企業でも、将来性・今後の見通しがしっかりしていれば、融資が受けやすくなるでしょう。

しかし、皆さんは金融機関に自社の情報を積極的に開示していますか。

試算表は出さない、出すのは決算書だけ、資金繰り表や経営計画書等も出さない、これでは金融機関もどう企業を評価したらいいのか分かりません。定期的に自社の経営状況を説明する、資料を渡すことによって、金融機関も企業理解を深めることができ、これまでの経営に問題があったとしても必要な金融支援ができるのです。

情報開示しないのなら、決算書から得られる情報だけで支援の方針を決めるしかありません。こちらから働きかけなければ金融機関も動けないと思った方がいいのです。経営悪化した企業が金融機関からの信頼を取り戻すには、時間と手間をかけて資料を作成する等の努力は必要です。

ただ、中小企業の中には「開示するといっても、どうやったらいいのだろうか」と考える経営者もいるでしょう。

そのような場合は、当社のような経営改善、資金繰り安定、金融機関との融資取引を支援する専門家が近くにいないかぜひ探して、まずは相談してみてください。