企業は販売・仕入それぞれの取引先に支えられて経営が成り立っているといえます。
そのため、金融機関としても、融資先企業に売上先や仕入先がどれだけあって、どのような取引をしているのかということは、企業評価する上での重要なポイントです。
売上先の数が分散型、一社集中・寡占型、不安定型によって、金融機関は次のように考えます
分散型
売上先が分散されている場合、かつ売上が増加傾向にあるのでしたら、企業の倒産リスクは低いと考えられます。なぜなら、売上先が分散されているため、一部が倒産したとしても売上先に占めるウエイトは低いですし、さらに売上が増加傾向にあるため減少分を埋め合わせることが容易だからです。
短期間で業績が悪化するリスクは低く、担保や保証面が弱くても、積極的に融資を推進しやすい企業です。
売上が横ばいや減少傾向にある場合であっても、売上先が分散されていることから安定しているかもしれませんが、企業のライフステージは成熟期や衰退期に入っていると考えられます。
融資先が直ちに倒産するようなことはないとしても、企業が成長するための新たな事業を見つけることができなければ、業績は徐々に悪化していくことになります。
一社集中・寡占型
売上先が集中しているということは、それだけで分散型よりもリスクが高いと考えられます。
たとえ、売上は増加傾向にあっても、売上先の「倒産」「事業転換」「取引先変更」等によって取引が解消・縮小すれば、売上の大半を一気に失うことになりかねません。そして、その失われた売上を回復する事が容易ではない事は、誰でも想像できるでしょう。
不安定型
売上先が不安定で頻繁に入れ替わっている場合、企業の業績が安定して推移することは難しいといえます。
原因としては、競合他社との競争が激しく売上先企業の力が強くなってしまう、あるいは、代替商品が出現していることが考えられるでしょう。
売上が増加傾向にあっても、それがいつまで続くか不透明ですし、売上が横ばいや減少が続いている場合はリスクが拡大している状況だと考えられます。
いずれにせよ、売上先が不安定にある企業というのは、金融機関からするとリスクが高く見えるのです。
企業と金融機関では考え方が違う
しかし、これまで申し上げたことについては反対意見もあると思います。
例えば、製造業を営んでいる中小企業で、かつ大手企業の下請けをされていると、そこからの仕事だけで手一杯ということがあるかもしれません。それに販売先を増やしたくとも、急な依頼にいつでも対応できるよう機械を空けておかなければならず、むやみに増やせないという事情もあるでしょう。
確かにそういうやむを得ない事情はあります。しかし、これまで説明した通り金融機関の目線からすると、一社や数社に集中しているのはリスクが高いと考えるのです。
ただ、そうはいってもすぐに取引先を開拓することは簡単ではありません。そこで、企業は売上先のどのような作業を請け負っているのか、どのような技術力を保有しているのか、それによって直ちに取引が解消・縮小されないかを金融機関担当者に詳しく説明するといいでしょう。