3社に1社が過剰債務

東京商工リサーチ2021年8月17日
第3回過剰債務に関するアンケート 中小企業の「過剰債務率」が過去最悪の35.7%
東京商工リサーチの調査によると、中小企業の3社に1社が過剰債務にあるとのこと。
4月以降3回の調査で割合がもっとも高く、特に飲食業79.6%や宿泊業78.0%は非常に高い結果です。
中小企業の資金繰り支援策として、実質無利子・無担保融資や返済猶予が積極的に行われてきたことで、倒産の件数自体は落ち着いていますが、特に飲食業や宿泊業はコロナで思うような経営ができず、資金調達に頼らざるを得なかったため、過剰債務に陥っている企業は増加しています。みなさんもそう感じているでしょう。
経営者が過剰債務を感じると次の問題があります。
まず経営者が慎重になり、積極的な経営ができなくなります。何か新しい事業なり取組みを始めようとしても資金に余裕がない、無理に進めてみたところうまくいくとも限らない、ならばここは無理をせず現状を維持するだけにしようとなります。
そして2つめは、まだ融資が受けられるとしても、「新たに融資を受けても将来の返済負担が大きくなるだけ」と、将来の返済負担増を嫌がり資金調達に動かない経営者もいるでしょう。
すると常に手持資金にゆとりがない経営を続けなければなりません。支払や返済に影響が出るかもしれませんし、そうはならなくとも資金繰りを気にしながら経営を続けなければなりません。
事業継続意欲をお持ちであり、かつ金融機関からは融資がまだ可能との回答を得ているのであれば、過剰債務になったとしても手持ちの現預金を厚くしておいたほうがいいと思います。
やはり資金繰りに余裕があると、資金繰りに費やす時間を節約できますし、不安からも解放されます。またビジネスチャンスを逃さずにすみますから、より再生できる可能性があるでしょう。
財務分析で自己資本比率が高い企業は、経営の安全性が高いと聞いたことがあるかもしれません。確かにそうでしょう。しかし、そんな企業でも現預金が全くなければ経営はできません。
現預金にゆとりがあれば経営者は事業に集中できます。絶対とは言えませんが、その結果として過剰債務の解消も不可能ではありません。実際、当社顧問先でもコロナ前は過剰債務と実質債務超過でしたが、顧客への新たなサービスの取り扱いを始めたところ、たった1年半で解消の目途が立ちました。
過剰債務になっても、手持資金にゆとりがあることで自社の経営にメリットが十分にあると判断できるのなら、資金を調達しておきましょう。