中小企業経営

自社の私物化

多くの中小企業が同族会社で、経営者またはその家族が大株主でもあることがほとんどです。株主は経営者一人、あるいはその家族が株主であるから、会社にあるお金は自分のものという感覚になってしまう方がいると思います。

実際、個人的な趣味、株式投資、自宅購入の頭金、あるいは親しい女性へ流れていることも。自分が一番偉いし、誰も文句を言わないから、「資金繰りに少し余裕があるのだからいいだろう」となっちゃうんですよね。

しかし、自社のお金を私物化することは、今後の経営にはデメリットしかありません。経営者に流れた資金は貸付金として処理するのですが、2つの問題が発生するからです。

■利息の発生

ここで書かれたことの詳細は、税務署や顧問税理士によく確認してください。

企業が無利子で資金を貸すことはできません。利息を付けることが求められます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2606.htm

この国税庁ホームページを見ると平成30年~令和2年中に貸付けを行ったものについては1.6%とありますから、一部例外を除き企業は貸付金に対する利息を雑収入などで計上しなければなりません。つまり経営者から見ると自社から借り入れた資金以外に利息を支払う必要があるのです。

だから経営者が私物化している企業の貸借対照表を見ると、貸付金以外にまだ受け取っていない利息として未収入金が計上されています。仮に貸付金が1,000万円あるなら、先ほどの1.6%で年間16万円です。

決算書には、経営者への貸付金はそれだけあっても、実際手元にはないので返済どころか利息も支払えないことが多い。するとどんどん未収利息が膨らんでいきます。利息は計上しないと税務調査で指摘されます。

貸付金が一時的に発生することはあるでしょう。それが駄目だというわけではありません。しかし、個人的なことに資金を使わない、あるいは発生したら早期に対応する、それをしっかりやらないと貸借対照表には価値の無い資産が増えていくのです。

あと、私の顧問先では経験がないのですが、貸付金であることを証明できないと、経営者に対する賞与と見なされてしまいます。役員への賞与は税務上経費にならないうえに、経営者は余計に個人の税金が増えることにもなります。

■金融機関からの資金調達に影響

業績は好調で、手持ち資金がいくらでもあるのなら、金融機関は口を出す立場にはないでしょう。しかし、融資した資金が、事業のための資金として使われていなかったら、金融機関はどう思うでしょうか。

「融資申込時の説明通りにお金を使っていない。全然違うことに使うならもう融資するのは控えよう」と考えます。

資金使途違反ですから、直ちに一括返済を求められてもおかしくありません。現実にはその可能性は極めて低いですが、経営者個人への貸付が解消されないなら、新規融資は控えようとなります。

商品仕入資金等と説明して経営者への貸付金になっていたら、今後の資金調達に影響するのです。少額の貸付金があっても影響ありませんが、度が過ぎるようだと要注意です。

■法人と個人を明確に分離する

このように経営者と企業のお金を明確に分けないでいると、税務や資金調達で大きな問題が発生することになります。

一度汚くなった決算書をきれいにするのは容易ではありません。

まだあまり増えてはいませんが、金融機関は経営者に保証を求めない融資も取り扱っています。そこで求められている要件の一つに、法人と個人の明確な分離があります。企業の私物化を金融機関は嫌いますから、資金調達に影響を与えないためにもぜひしっかり分けるようにしましょう。

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