中小企業経営

調達資金を使う時は慎重に

新型コロナウイルス対策で5月1日からスタートした民間金融機関による無利子・無担保融資は、5月31日時点での申込件数は23万5千件、保証承諾件数は15万2千件、金額では2兆7千億円に達しました。

日本政策金融公庫が先行して無利子融資をスタートさせましたが、公庫に申し込みが殺到、5月1日から民間金融機関でも対応が始まりました。

緊急事態宣言は解除され、当面の資金繰りを維持するために借入はしたものの、売上が回復せず倒産する、あるいは後継者で悩んでいる企業は少しでも周囲に迷惑をかけないうちに廃業する、そんなケースは増えてくるのではないでしょうか。

経営者は自社の将来を展望しにくい状況が続きますし、信用保証協会もまだ前向きな保証審査を継続するでしょう。

そうなると、資金繰りに困っている中小企業が多いし、100%保証でリスクのない融資を獲得できるため、金融機関は融資セールスに積極的ですから、自分たちの都合を優先した提案が横行してきます。「目一杯借りておきましょう」と。

こんな非常時ですから、当社も顧問先にはできるだけ資金を手厚く持っておくことをアドバイスしています。だからそういう担当者の方が都合はいい場合もあります。

しかし、顧問先の一部にはそういうアドバイスはしていません。なぜなら、たくさん資金が入ってくると、余計なことに使っちゃいそうな経営者だからです。

1998年、中小企業金融安定化特別保証制度という制度がありました。略して安定化とか安定化資金と言っていました。

別枠保証で月商の3か月、最大5,000万円を保証する内容です。税金の滞納等、よほどのことがない限り保証が出るので、制度スタートから金融機関の間で奪い合いでした。今の状況と一緒です。

そしてしばらくしてから銀行を退職したのですが、たまたま融資した企業の前を通ったら社長がうれしそうな顔をして高級車に乗り込むところでした。

「久しぶりです。社長」と声を掛けたら、「瀬野さんが融資してくれた5,000万円でこれを買いました」と言われたのです。確か資金使途は運転資金だったような気が。あと、海外旅行に家族で行っちゃった人もいました。事業目的で借りた資金を個人的に使うのは資金使途違反です。

今回のコロナウイルス対策で調達した資金は、固定費の支払い、仕入れ支払い、非常時に備えて保有しておく、など経営を維持するために使うものです。

ただ、多額の資金が投入されると、個人的なことではないにしても、余計なことに使ってしまいがちです。例えば、交際費や会議費、広告宣伝費などです。積極的な経営は必要ですが、預金残高と同時に借入金残高も増えているわけですから慎重さも必要です。

これからもしばらくは、金融機関から積極的な営業があると思いますが、それは非常時の中小企業を支援する公的支援制度があるからであり、通常なら融資は受けられなかったのです。

金融機関は、自分たちの営業目標を優先して行動してくることが多いですから、それを上手く利用して調達するのはいいでしょう。しかし、そんな時だからこそ慎重さも必要です。

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