中小企業経営

ゾンビ企業について

最近、ゾンビ企業に関する取材をよく受けます。その原因は以前、ブルームバーグで取材を受けたことのようです。

その時の記事はこちらです。

日本語版「ゾンビ企業がデフレ脱却の足かせに、ロードマップなきアベノミクス

英語版「Zombie Hordes: Thousands of Japanese Firms Dodging Bankruptcy

取材で聞かれるのが、「日本のゾンビ企業が増えて、これから金融機関は厳しい態度で臨むだろうから、倒産が急増するのでは?」といった内容です。ということで、今日はゾンビ企業について書いてみました。

ゾンビ企業とは

ゾンビ企業という言葉はいつの間にかよく聞くようになりました。ゾンビ企業の定義について、国際決済銀行(BIS)が2018年9月に報告書を発表しました「The rise of zombie firms :causes and consequences(ゾンビ企業の台頭:原因と結果)」には次のように書かれています。

「ゾンビ企業は10年以上存続し、過去3年以上にわたってインタレスト・カバレッジ・レシオが1未満にある企業をゾンビ企業と定義しています。」

インタレスト・カバレッジ・レシオとは、簡単にいうと借入金の利息を利益で賄えているかを表す財務指標です。

計算式は通常このようになります。

インタレスト・カバレッジ・レシオ=(営業利益+受取利息)÷支払利息

1を下回るようだと、営業利益や受取利息で支払利息をカバーできていないことになり、収益力のない企業であり、毎月の借入金返済ができないことになります。

OECD「Economic Survey of Japan(対日審査報告書)」

OECD(経済協力開発機構)が2015年に公表した「Economic Survey of Japan(対日審査報告書)」には次のように書かれています。

「中小企業は、相当な政府支援を受けている。政府は、中小企業融資の約10%、政府保証も入れると20%を提供し、その割合は他のOECD諸国よりもずっと高い。しかし、中小企業への大きな公的支援には、マイナスの副作用がある。第1に、市場ベースの融資の発展を阻害している。第2に、寛容な政府保証が再編を遅らせ、生き残れない会社、いわゆる「ゾンビ」企業を温存する(Caballero et al,2008)。

さらに日本に対して次のように提言しています。

「政府支援は縮小されるべきであり、政府保証は限られた期間若い会社に焦点を当てて行われるべきだ。金融監督者は、金融機関が中小企業への定期的な与信審査を行うにあたって求められる基準を強めるべきであり、検査結果を公表し、生き残れない企業の再編計画を準備すべきだ。中小企業への貸出条件緩和を銀行に迫るのを縮小すべきだ。さらには、市場に基盤を置いた中小企業金融を発展させるべきだ。」

このゾンビ企業の存在が経済成長の足かせになっている、したがって政府の保証や支援を縮小し、金融機関はいつまでも利益を出せないような企業には支援を打ち切り、速やかに市場から退出させ、ゾンビ企業に存在する人材などの経営資源を新しいあるいは成長企業に振り分けたほうがいいということです。なお、2017年版の「Economic Survey of Japan(対日経済審査報告書)」でも同様の事が指摘されています。

日本では中小企業に対して甘すぎるのは確かです。私もそう思います。信用保証協会は長年100%保証を続けてきましたが、現在でも80%(一部制度は100%)保証しています。これでも高い保証割合でしょう。さらに中小企業金融円滑化法によってリスケジュールは極めて容易になり、本来は廃業すべき企業も延命させてしまったのは事実です。金融円滑化法終了後もリスケジュールの実行率は極めて高いままです。

このような状況は、中小企業にとってはもちろん都合がいいですし、金融機関もプロパーではとても融資できないような中小企業に対して、リスクを大幅に減らして融資が実行できます。そして、リスケジュールで延命させれば元金の返済が進まなくても利息は確保できます。無理に廃業に追い込めば担保・保証でカバーされていない分は損失が発生しますし、その後の処理も面倒ですから行職員としてはリスケジュールでの継続支援となるでしょう

新規融資やリスケジュールにより倒産が減れば、国や政治家にとっては自分たちが中小企業の資金繰りを支援しているとアピールできます。今後の支持率や選挙に影響することでしょう。

OECDから言われなくても、信用保証協会による過度な保証依存は、企業の経営改善を遅らせ、金融機関も支援に消極的と問題になっていました。そこで、昨年4月から信用補完制度が改正されました。創業時や小規模事業者、あるいは経済危機や大災害発生時に対する支援を厚くし、成長期にある企業にはプロパー融資の比率が高くなるよう金融機関と信用保証協会が適切な支援を行っていく、さらに廃業に関する保証制度も導入されました。

Economic Survey of Japan(対日審査報告書)では、与信審査の基準を強めるよう提言していますが、現在でも金融機関は企業向け融資に積極的で、優良企業だけでなくややリスクの高い企業にも営業がよく行われています。リスケジュールでも、経営改善が一向に進まない企業にも継続支援が続けられることが非常に多いです。見た目にはわからなくても、リスクある融資残高が増えているのは間違いないでしょう。

しかし、それがすべてゾンビ企業への融資なのでしょうか。

当社が考えるゾンビ企業

当社は中小企業の経営や資金繰りの改善をお手伝いしていますが、2タイプの経営者と出会います。

・これまでの経営結果から目をそらさず、意欲を持って経営改善に率先して実行していく。

・これまでの経営結果から目をそらして、経営改善を先送りする。あるいは、最初は意欲を持って経営改善に取り組むものの、それほど結果が出ていなくても金融機関は支援し続けるため、(これからも金融機関はリスケジュールに応じ続けるだろうと)経営改善を怠り始める。

先ほど、BISのゾンビ企業の定義が「10年以上存続し、過去3年以上にわたってインタレスト・カバレッジ・レシオが1未満にある企業」と書きました。確かに、支払利息よりも営業利益が少ないのでは経常利益はマイナスですから、そのまま続けばいずれは倒産となるでしょう。しかし、実際にはそんな状態から再生する企業も少なくはありません。

私が考えるゾンビ企業とは、経営改善から逃げる、金融機関が優しいからと経営改善を怠る経営者がいる企業だと思っています。そしてそんな企業はいずれ金融機関だけでなく顧客からも見放されるでしょう。

決算書は悪くても、顧客から支持されている企業なんていくらでもあるし、経営者や従業員が一体となって経営改善を行い、数年かかって優良企業に変わる企業だってあります。だから、頑張っている中小企業(経営者や従業員)に、ゾンビ企業という言葉を使うのは大変失礼だと思うのです。

数字でのゾンビ判定は間違い

海外の中小企業のことはよく分かりませんけど、このように日本の中小企業を決算書だけで判断するのは間違いです。

決算書は債務超過や赤字が続いていたりしても、ずっと事業を継続している中小企業はいくらでもあります。

そういう企業が顧客から求められない企業かというとそんなことはありません。特に小規模企業は、外部環境の影響を強く受けやすいですし、販売先が1社減っただけでも赤字になることは珍しくありません。それに自己資本が薄く金融機関からの借入金に依存しなければならい企業が非常に多く、利息支払いが負担になっていることが多いのです。

それに税務調査で嫌な目にあった企業だと、税務調査が来ないよう役員報酬を多めに計上して赤字にする企業も少なくありません。ちなみに大赤字にしても税務調査が来ないかというと、そんなことはありません。私が取締役に入っている企業は、年商分程度の繰越欠損金がありましたけど税務調査がありましたから。

また、数字上ではゾンビ企業と判断しても、例えば建設業や土木業関連の企業は、日本は災害大国であることから一定の企業数を確保しておく必要があります。

数字上ではゾンビ企業でも存在意義のある企業は多いのです。そして、決算書は悪くても自社の強みを取引先に評価してもらい事業継続している企業はいくらでもあります。

油断はしない

現状では倒産が増えているわけではりません。金融機関も優良企業だけでなくややリスクある企業にも融資を行っている状況に変わりはありませんし、リスケジュールでも応援してもらえることが多いですから。中小企業には有利な環境にあるといえます。昨年4月からスタートした信用補完制度の改正もマイナスに影響はしていません。したがって、今のところ倒産が急増するということは考えにくいです。

もしもですがこれから国際的にゾンビ企業を排除しようという動きが強くなれば、現在の環境が大きく変化することはあるかもしれません。しかし、急激に行えば経済に与える影響は甚大ですから、やるとしても緩やかに実行するでしょう。

ただ油断はしない方がいいですし、そんなことに関係なく悪化したらいずれは経営を立て直さなければなりません。ゾンビ企業と見なされないよう経営改善計画の策定と実行を継続しましょう。そして顧客から評価される企業を常に目指し続ける、これが銀行融資にも一番大切なことなのです。

 

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