経営者保証に関するガイドラインが平成25年12月5日に公表され、翌年2月より運用が開始されました。運用開始から2年半以上経過しました。
ガイドラインの目的の1つとして、金融機関に対して経営者保証に依存しない融資の推進があります。
その条件として次の3つがあります。
- 法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されていること
- 法人のみの資産・収益力で借入返済が可能であること
- 財政状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保
なお、すべての条件を満たす必要はありません。
金融庁が平成28年6月20日に公表した、民間金融機関における「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績によると、平成27年10月~平成28年3月の活用実績は12%との結果でした。
金融庁や中小企業庁は推進に力を入れるよう金融機関に求めています。確かに昔に比べると経営者保証に依存しない融資は増加していますが、なかなかそう簡単ではないようです。
第三者の保証や担保は抵抗ありますが、経営者自身の保証だけで問題なく資金調達ができるのであれば、「保証なんていくらでも提供する」という経営者は多いのかもしれません。
また、経営者保証を解除するためには、企業側にもそれ相応の対応が求められています。
①法人の資産や収益力で返済が可能であること
②法人と個人の経理や家計、資産が明確に区分されていること
③金融機関からの情報開示要請があれば、決算の報告のみならず、試算表や資金繰り表等の定期的な報告を行う、事業計画や業績見通し及びその進捗等に関する情報を開示・説明する義務
したがって、保証解除を認めてもらうためには、業績の改善だけでなく、それだけの経理・経営体制が求められるのです。
中小企業の多くは経営者が株式の過半数以上を保有している事が多く、そのようなオーナー社長の経営規律をチェックするのは、金融機関しかないのかもしれません。その経営規律を保つ手段として、経営者保証は有効ともいえます。したがって、経営者保証を解除してもらうよう交渉するには、財務内容が良好なだけでは不十分であり、法人・個人の明確な分離や、情報開示等による経営の透明性確保も重要といえるのです。