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平成28事務年度金融行政方針

金融庁は10月21日に平成28事務年度金融行政方針を公表しました。

 

この金融行政方針というのは、これから一年間、金融庁が金融機関に対して何を求め、どのような手法で実施し実現していくかを示したものといえます。

 

全文を参照なさりたい方は「平成28事務年度金融行政方針」をご覧ください。

 

ここでは中小企業に関係する内容を、金融行政方針の文章を使ってご説明します。

 

■検査・監督のあり方の見直し

金融庁はその発足当初、不良債権問題の解決など、当時の緊急の課題に対応するため「ルール重視の事後チェック型行政」の方針を打ち出しました。

 

そして、厳格な個別資産査定や法令遵守状況の確認を中心とする検査・監督手法を確立し、当時の課題であった金融行政の信頼回復や不良債権問題の克服など一定の成果を出しました。

 

しかし、このような手法は、そのまま機械的に継続すると次のような3つの副作用が生じる恐れがあります。

 

A)銀行融資において、借り手の事業内容を評価するのではなく、担保・保証があるかといった形式を必要以上に重視する傾向「形式への集中」

 

B)将来の経営の持続可能性よりも、過去の経営の結果であるバランスシートの健全性ばかりを議論するといった傾向「過去への集中」

 

C)金融機関の経営全体の中で真に重要なリスクを議論するのではなく、個別の資産査定に専らリソースを投入するといった傾向「部分への集中」

 

実際、金融機関にとって、企業への貸出金に担保や保証がある、または財務データが良好で回収確実かばかりを重視する傾向になってしまい、企業の事業性評価をすることができなくなってしまいました。

 

また、金融を取り巻く環境は急激に変化しています。横並びの量的な拡大競争に集中するような現在のビジネスモデルは限界に近づいており、金融機関は多様化する顧客ニーズを的確に捉え、質の高いサービスを工夫し、顧客と共に成長する新しいビジネスモデルを確立していく必要性が高まっているといえます。

 

そして、そのような環境変化や課題への対応には、金融機関自身による主体的で多様な創意工夫が求められているのです。

 

金融行政の手法についても、金融機関が最低限満たすべき基準の遵守状況をチェックする従来のルールベースの手法より、個々の金融機関の状況に応じて行う動的な監督や、金融機関の創意工夫を促す対話といった手法を活用していく必要があるとして、

 

これまでにも

・個別資産査定は、金融機関の判断を極力尊重すること

・担保・保証に過度に依存しない、事業を見た融資への転換促進

・将来の課題を見据えた(フォワードルッキングな)問題提起と対話による自主改善

・金融機関の優れた取り組み(ベスト・プラクティス)の掘り起こしと情報提供

・金融機関の顧客企業との対話による金融機関の課題の抽出(企業ヒアリング)

 

などの検査・監督の見直しに取り組んできました。しかし、金融業界においては、この新しい検査・監督の考え方や取り組みが十分に浸透しているとはいえない状態です。

そこで、金融庁は検査・監督の基本的な考え方として、次の点に重点を置いたモニタリングの手法を活用していくとしています。

 

A)形式から実質へ

規制の形式的な遵守「ミニマム・スタンダード」のチェックより、実質的に良質な金融サービスの提供「ベスト・プラクティス」に重点を置いたモニタリング

 

B)過去から将来へ

過去の一時点の健全性の確認より、将来に向けたビジネスモデルの持続可能性等に重点を置いたモニタリング

 

C)部分から全体へ

特定の個別問題への対応に集中するより、真に重要な問題の対応ができているかに重点を置いたモニタリング

 

 

■金融仲介機能の質の向上

1、日本型金融排除の実態把握

 

金融庁によると、金融機関からは「融資可能な貸出先が少なく、厳しい金利競争を強いられている」との主張がなされています。

 

しかし、金融庁が企業を対象にヒアリングしたところ、顧客企業からは「金融機関は相変わらず担保・保証がないと貸してくれない」との認識が示されるなど、金融機関と企業との認識に大きな相違があることが明らかになりました。

 

このように金融機関と企業双方の認識に相違が生じている背景には、金融機関が企業の事業内容深く理解することなく「十分な担保・保証があるか」、「高い信用力があるか」等の企業の財務指標を中心とした定型的な融資基準により与信判断・融資実行することで、そうした基準に適う一部の企業に対して融資拡大への過当競争が行われているのではないかと考えられます。

 

担保・保証がなくても事業に将来性がある先、あるいは足下の信用力は高くないが地域になくてはならない先、そういう企業は地域経済発展のためにも支援していく必要があります。

 

企業と日常から密に対話し、企業価値の向上に努めている金融機関は、地域の企業・産業の活性化に貢献するとともに、自らの顧客基盤の強化をも実現させていると考えられます。

 

そこで、金融庁は、各金融機関の融資姿勢等について、金融機関と企業の双方からヒアリング等を通じて、実態を把握していきます。

 

具体的には、十分な担保・保証のある先や高い信用力のある先以外に対する金融機関の取り組みが十分でないために、企業価値の向上が実現できず、金融機関自身もビジネスチャンスを逃している状況(※日本型金融排除)が生じていないかについて実態把握が行われます。

 

また、公的金融機関は、民間だけではリスクを取りきれないが、支援に値する企業に対する応分のリスクテイクを行うことで、民間金融機関の活動を補完する役割を負っているのですが、そうした役割を実際に果たしているかについても併せて調査する予定です。

 

具体的には、以下の点に着目し、企業や金融機関からヒアリング等を行います。

 

A)与信判断における審査基準・プロセス、担保・保証への依存の程度(事業性評価の結果に基づく融資ができているか)

 

B)貸付条件変更先等の抜本的事業再生等を必要とする先に対して、コンサルティングや事業再生支援等による顧客の価値向上に向けた取り組み

 

C)公的金融機関の融資・連携状況の実態把握(民間金融機関の融資と補完的・連携的か)

 

※日本型金融排除のイメージ

 

 

2、金融仲介の質の向上に向けての金融機関との深度ある対話

昨事務年度のモニタリングにおいて、企業から評価される金融機関は、取引先企業のニーズ・課題の把握や経営改善等の支援に向けた取り組みを組織的・継続的に実施することにより、自身の経営の安定につなげていること等が確認されたとしています。

 

多くの金融機関が経営理念の中で、金融仲介機能を発揮し、取引先企業のニーズに応じた融資やソリューションの提供により、企業の成長に貢献していく方針を掲げているにもかかわらず、顧客に対し理念通りの行動ができていない金融機関も少なからずあるように見受けられます。

 

どうすれば金融仲介の質を一層高めていけるか、上記1の日本型金融排除の実態把握や先般公表した「金融仲介機能のベンチマーク」等の客観的な指標を活用し、金融庁と金融機関との間で深度ある対話を進めていきます。

 

その際、そうした顧客本位の経営を真に実現するため、ガバナンスの状況、事業戦略・計画、支店のノルマ、業績目標・評価、人材育成、融資審査体制等含め、金融仲介の質の向上に向けて対話を行っていきます。

 

3、開示の促進等を通じた良質な金融サービスの提供に向けた競争の実現

金融機関が顧客本位の取り組みについて十分な情報提供を行うことは、顧客が自らのニーズや課題解決に答えてくれる金融機関を主体的に選択することを可能とし、しいては良質な金融サービスの提供に向けた金融機関間の競争の実現にもつながります。

 

こうした観点から以下の取り組みを行います。

A)金融機関に対し、「金融仲介機能のベンチマーク」等の客観的な指標を活用し、その金融仲介機能の発揮状況について、積極的かつ具体的に開示するよう促す

 

B)金融機関の事業性評価に基づく融資や本業支援等の組織的・継続的な取り組みについて、優良な取り組みを行っている金融機関を公表・表彰する

 

C)「経営者保証に関するガイドライン」及びその活用状況を広く周知するために、金融機関による開示を更に促す

 

 

■自社の将来性をアピールする能力が必要

簡単に申し上げると、決算書の数字や、担保・保証だけでなく、もっと事業内容をよく見て、将来性を評価して融資や各種支援を行いましょうということです。

そのために、それを推進していくためにも、「日本型金融排除の実態把握」や「金融仲介機能のベンチマーク」等の客観的な指標を活用して、もっと金融庁と金融機関が深度ある対話を行っていくとしています。

 

また、優良な取り組みを行っている金融機関を公表あるいは表彰することを予定しています。

 

この内容は、金融庁が金融機関に向けた内容となっています。しかし、私たち企業側もこの内容を重視しなければなりません。今までの決算書や担保・保証重視の融資審査から、企業が自社の将来性をどのように金融機関に提示して説明していくか、積極的にアピールする能力が重要となってくるのです。

 

 


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